福井への伝統工芸旅~越前和紙の魅力

こんにちは。EY DESIGNインテリアデザイナー山口恵実です。
今日は2月末に行った福井の伝統工芸の旅についてご紹介します。

お金と時間が許す限りいろんな場所へ旅したい、これが私の人生の生きがいであり、毎年の目標です。
旅の目的は、地域の歴史を知り、本物を知り、伝統工芸を学ぶこと。それを新しいインスピレーションとしてデザインに昇華させるとともに、多くの人に魅力を発信したいと思います。

2月の福井は、英国流インテリアデザインスクール「美空間スタイリスト養成講座」のオフ会に講師や仲間達と一緒に行きました。
福井には和紙、漆器、刀、鯖江の眼鏡など、有名な伝統工芸や産業がたくさんありますが、カニや恐竜の知名度に比べると、それらの産業はあまり知られていないのが現実ではないでしょうか。
新幹線が開通し、これから注目度が高まる福井。今日はそんな福井(越前)についてご紹介します。

EY DESIGN福井伝統工芸の旅

越前和紙の里


福井は全国有数の和紙産地。越前和紙は1500年の歴史を持ちます。
室町時代から江戸時代にかけては公家や武士の公文書に越前和紙が使われ、良質な紙は”権力の象徴”とされていました。そんな歴史を詳しく説明くださったのが、和紙の問屋杉原商店の10代目杉原社長(写真左)。


大正時代の蔵を改装したギャラリーで、越前和紙の歴史や現状の取り組み、どのように世界に向けて発信をしているか詳しいお話を伺いました。

杉原商店は2024年3月に東京ビックサイトで開催されたJapan Shopにも素晴らしいブースで出展されていました。
イタリアのミラノサローネやイギリスの展示会にも積極的に出品されており、杉原社長は越前和紙の魅力を世界に発信している第一人者です。
2024.3月Japanshopでの和紙インスタレーション。これ全部和紙↓すごいでしょう!?


そして和紙の里では手漉き和紙の工房を4件見学させていただきました。
岩野平三郎製紙所では、和紙の原料(ガンピ・コウゾ・ミツマタ)からどのように手漉き和紙が作られているのか、工程をひとつひとつ詳しくご説明いただきました。


長田製紙所では和紙アートを製作している過程を拝見しました。
今までの和紙の固定概念を覆す新たな表現方法に感動しました。


別の和紙工房では、海外展示会用の大きなインスタレーション和紙アートを拝見したり、大手内装メーカーに卸している高級和紙壁紙を拝見したり。

昔は和紙の最大の需要だった襖(ふすま)や障子(しょうじ)の需要がライフスタイルの変化で激減する中、伝統を絶やさずに新しいものを生み出し、どのように付加価値を上げていくか、和紙の里では地域一丸となって取り組んでいました。

イタリアx日本。伝統工芸を展示するKITAギャラリー

和紙の里にある越前ギャラリーKITA’Sも見学しました。
イタリア・日本で長年活躍されてきた著名プロダクトデザイナー喜多俊之氏がプロデュースした日本の伝統工芸技術を使った作品を展示する古民家ギャラリーです。

EY DESIGN福井伝統工芸の旅


喜多氏がデザインし、日本全国の伝統技術を使った品々が展示されていました。
代表作のひとつ、越前和紙を使いイタリアを中心に人気を博した照明器具TAKO↓


この旅の後、喜多氏の本を2冊拝読しました。そこに書かれていた言葉に心から共感を覚えましたので掲載します。

「喜多俊之 デザインの探険1969-: 僕がイタリアに行った理由」より(文章は少しまとめて改変しています)
”「日常の暮らし」こそが生活文化と経済、産業の土壌。
何が本物で何が美しいのか、日常の暮らしから習得できるようにしたい。
いくつもの時代を乗り越え培われてきた日本の伝統文化とそこから生まれるイノベーションの大切さを伝えたい。


伝統は伝統のまま保存するのではなく、イノベーションを生み出していかないと廃れてしまう。
まさに越前和紙の里はイノベーションを生み出していこうと地域一丸となって取り組んでいると感じました。

私もインテリアデザイナーとして、伝統工芸からどのようにイノベーションを起こしていくか、現代のコンテンポラリーな空間にどのように伝統工芸を取り入れていくか、考えるひとつのきっかけとなった旅となりました。



喜多ギャラリーの近くには、大瀧神社という通称「和紙の神様」の神社もあります。
急な山の斜面に沿うように本殿と拝殿とが一体化し、複雑な屋根が連なる特徴的なつくり。
ジブリの映画に出てきそうな独特な世界観で、夜だとちょっと怖いかもしれない。

EY DESIGN福井伝統工芸の旅

和紙を使った新しいインテリア

福井では新OPENの観光施設やバーの内装に越前和紙が使われており、いくつか見に行きました。

福井駅の目の前にあるBAR「灯火
バーカウンターの背面に越前和紙が貼られていました。
ライン照明が和紙を優しく照らして良い雰囲気。
このBARはフレッシュフルーツをふんだんに使ったカクテルが絶品です。私はキンカンのカクテルをいただきましたが、イチゴやキウイのカクテルも美味しかった。平日でもひっきりなしにお客様が訪れる地元でも人気のBAR。


福井の新しい観光名所エシトコ
食事やお酒の試飲をいただけます。ここでは様々な色の和紙壁紙が使われていました。

レストラン棟では和紙の壁紙に左官で作られた有機的なカウンターが印象的でした。
和紙壁紙は間接照明と好相性ですね。

EY DESIGN福井伝統工芸の旅

漆器、ナイフ、お酒…福井には見どころがたくさん


福井には和紙の他、漆器、箪笥、刀剣、鯖江の眼鏡など、伝統工芸や産業がたくさんあります。
いろいろ見て回りましたが、最後に少しだけpick up。

タケフナイフビレッジでは、複数の工房が一つの組合をつくり、ヴィレッジ内でナイフ・包丁をはじめ金物の製作をしています。

包丁とミラーを使ったインスタレーション↓
包丁は日用品であり芸術品ですね。

EY DESIGN福井伝統工芸の旅

そして福井はお酒と食事が最高です。
今回なぜ新幹線開通前なのに2月に福井に行ったかというと…越前カニを食べたかったから!!
東京に比べてカニが安い。そして美味い!

EY DESIGN福井伝統工芸の旅

そして日本酒も♡
福井旅の締めくくりは、𠮷田酒造の吉峯蔵での酒蔵ツアーとお酒テイスティング。


ほろ酔い気分で帰路につきました。

今回の旅では特に「和紙の里」で和紙を製作している過程や、新しい和紙の表現方法を拝見できたこと、実際に和紙を取り入れた空間をいくつも見れたことが大変貴重な経験になりました。
ご案内くださった杉原商店の杉原社長、工房の皆様ありがとうございました。

そしてインテリアデザイナー、コーディネーター仲間と一緒の旅は楽しいですね!
みんな興味は一緒だけれど、観点がそれぞれ違うから感想を聞くのも楽しいし、細かい納まりをチェックしたり意見を言い合うのも楽しい。

新幹線開通で東京からのアクセスがぐんと良くなった福井、ぜひ皆さん足を運んでみてください。

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EMI YAMAGUCHI
EY DESIGN
インテリアデザイナー山口恵実

英国で習得したデザインセオリーと日本の美意識を融合し、首都圏を中心に新築・リノベーションのインテリアデザインを行う。
好きなもの:歴史&アート巡りの旅

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